保護具の必要性、義務と関連法規 事業者は「労働安全衛生規則」に基づき、労働者の安全に配慮しなければなりません。

「防毒マスク」は有毒なガス、蒸気等の吸入により生じる人体への影響を防止するために使用されるもの であり、その規格については、防毒マスクの規格(平成2年労働省告示第68号)に定められた規格・区分に適したものを使用するよう「厚生労働省基発第 0207007号」により示されています。

また、事業者は、衛生管理者、作業主任者等の労働衛生に関する知識及び経験を有する者のうちから、 各作業場ごとに防毒マスクを管理する保護具着用管理責任者を指名し、防毒マスクの適正な選択、 着用及び取扱方法について必要な指導を行わせるとともに、防毒マスクの適正な保守管理に当たらせなければなりません。

事業者は有害物が発生する作業場(屋内、屋外に限らず)に置いて、その原因を除去するために必要な措置を講じなければならない。

(第579条有害原因の除去、第577条ガス等の発散の抑制等、第582条粉じんの飛散の防止) 事業者は有害物を取り扱い、発生している作業場には適切な保護具を備え、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない >保護具は各個人につき一つを備え、サイズや使用状況の把握の観点からも、 使いまわしはできるだけ避けるべきです。

(第593条呼吸用保護具等、第594条皮膚障害防止用の保護具、第595条騒音障害防止用の保護具、第596条保護具の数等) 労働者は事業者から必要な保護具の使用を命じられた時は当該保護具を使用しなければならない >事業者だけでなく、労働者も使用義務が課されています。

(第597条労働者の使用義務) 防毒マスク用吸収缶と適応ガスについて 吸収缶の種類 試験ガス 試験濃度 適応ガス 有機ガス シクロヘキサン 0.03%(300ppm) アセトンイソブチルアルコールメチルエチルケトントリクロルエチレン二酸化炭素ブタノール酢酸エチル酢酸メチルキシレンクロロホルムトルエンメタノールなど ハロゲンガス用 塩素 0.02%(200ppm) 塩素臭素フッ素など 酸性ガス用 塩化水素 0.03%(300ppm) 塩化水素過酢酸硝酸臭化水素など アンモニア用 アンモニア 0.1%(1000ppm) アンモニア 亜硫酸ガス用 亜硫酸ガス 0.03%(300ppm) 二酸化硫黄 硫化水素用 硫化水素 0.02%(200ppm) 硫化水素 エチレンオキシド用 エチレンオキシド 0.003%(30ppm) エチレンオキシド ホルムアルデヒド用 ホルムアルデヒド 0.002%(20ppm) ホルムアルデヒド 吸収缶の交換と保存期間の目安 理論計算上の有効時間を過ぎた吸収缶は絶対に使用しないでください。

吸収缶の有効時間は使用する有害物質の種類や作業場所の濃度、温度、湿度、作業者の呼吸量、保管方法などにより左右されます。

作業環境・作業時間から推測し、十分な吸収能力のある吸収缶を選択して下さい。

吸収缶の使用時間については、当該防毒マスクの取扱説明書及び破過曲線図、メーカーへの照会結果などに基づいて、作業場所の空気中に存在する有害物質の濃度、温度や湿度に対して余裕のある使用限度時間を予め設定し、その設定時間を限度に交換してください。

また、使用中に臭気を感じたり、異常を感じた場合には直ちに新しい吸収缶にお取替 えください。

破過曲線図は吸収缶によって異なります。

右側に挙げている図ではガス濃度300ppmでは約240分、800ppmでは約100分の 破過時間を持つ吸収缶という事になります。

このように吸収缶の有効時間はガスの濃度によって大きく異なりますので、使用の際には事前の測定が必要となります。

また、吸収缶の保存期間の目安としては、製造年月より2年間となります。

2年を経過したものに加え、缶体にキズやへこみ、穴が空いているもの、袋に穴が空いていたり破れているものは、除毒能力が低下、無くなっている可能性がありますので、廃棄して下さい。

防毒マスクの使用条件 ◆下記の内、1つでも当てはまる場合は、防毒マスクの使用は出来ません。

送気マスク・空気呼吸器など環境条件に合った保護具を別途ご使用下さい。

酸素濃度不明、または18%未満の場合 有毒ガスの濃度、種類が不明の場合 環境中の有毒ガスを除去できる吸収缶が無い場合 性質の異なるガスが混在する場合 ◆防毒マスクの使用可能な濃度上限 作業環境下において、酸素濃度が18%以上であること 「常温」「常湿」「常圧」の環境であること 発生する有毒ガスの濃度が下記表の範囲内にあること また、吸収缶の能力として対応できても、曝露限界濃度より著しく高い環境での使用は望ましくありません。

作業環境空気の状態が不明であったり、空気中に吸収缶で除去できない有毒ガスが存在したり、許容濃度や、TLV−TWA値が勧告されていない有毒ガス等が存在するような場合には、送気マスクが必要となります。

種類 全面形防毒マスク 半面形防毒マスク 隔離式 2%以下 20,000ppm以下 ただし曝露限界のN1倍2%以下 20,000ppm以下 ただし曝露限界の10倍 直結式 1%以下 10,000ppm以下 ただし曝露限界のN1倍1%以下 10,000ppm以下 ただし曝露限界の10倍 隔離式小型 0.1%以下 1,000ppm以下 ただし曝露限界のN1倍0.1%以下 1,000ppm以下 ただし曝露限界の10倍 ◆1日の使用時間が30分未満の場合に、防毒マスクが使用できる有毒ガスなどの濃度の上限 種類 全面形防毒マスク 半面形防毒マスク 隔離式 2%以下 20,000ppm以下 ただし曝露限界のN2倍2%以下 20,000ppm以下 ただし曝露限界の30倍 直結式 1%以下 10,000ppm以下 ただし曝露限界のN2倍1%以下 10,000ppm以下 ただし曝露限界の30倍 隔離式小型 0.1%以下 1,000ppm以下 ただし曝露限界のN2倍0.1%以下 1,000ppm以下 ただし曝露限界の30倍 ◆曝露限界とは ほとんど全ての労働者が連日繰り返し曝露されても、健康に有害な影響を受けないと考えられる環境条件の限界。

日本産業衛生学会の許容濃度、ACGIHのTLVなどがある。

◆防護係数(表のN1 N2倍について) 防護係数は環境中の有害物質濃度(マスクの外側)/吸気中の有害物質濃度(マスクの内側)で表します。

尚、防護係数を測定しない場合はN1倍を50倍、N2倍を150倍とします。

※上記は参考情報です。

最終的な判断は、関係省庁および現場責任者、作業主任者の判断を仰いでください。

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